ここが違う!前払式支払手段とポイントの利用に関する規制

標準

過去のコラムでも解説したとおり、前払式支払手段(例:Suica)とポイント(例:Tポイント)の違いは、発行する場面において、利用者から「対価」(資金決済法3条1項)を受け取るかどうかにあります。

このような違いに加え、利用の場面においても、両者には決定的な違いがあります。

それは、自由な払戻し(換金、返金など)が認められるかどうかという点です。

◆前払式支払手段は払戻しが原則禁止

前払式支払手段は、商品・サービスの提供を受けるために発行されるものであり、その払戻しが原則として禁止されています(資金決済法20条2項)。

自由な払戻しが認められるとすると、元本の返還が約束されることになり、出資法で禁止される「預り金」に当たったり、前払式支払手段を送金手段として利用することが可能となり、銀行法で禁止される「為替取引」に当たったりするおそれがあるからです。

前払式支払手段は、あくまでもその利用が商品・サービスの提供の場面に限定されているからこそ、出資法や銀行法の特例として認められているわけです。

さて、このような前払式支払手段であっても、「払戻しが少額である場合その他の前払式支払手段の発行の業務の健全な運営に支障が生ずるおそれがない場合」には、例外として払戻しが認められる場合があります。

具体的には、次の3つの場合に限られます。

① 基準期間における払戻金額の総額が、その直前の基準期間の発行額の20%を超えない場合
② 基準期間における払戻金額の総額が、その直前の基準日未使用残高の5%を超えない場合
③ 保有者のやむをえない事情により前払式支払手段の利用が著しく困難となった場合

①や②により払戻しをする場合、払戻しに応じた金額を管理しておき、基準期間ごとに払戻金額が基準内に収まることを確認しなければなりません。

③により払戻しをする場合には、払戻しの理由を管理することが必要です。例えば、利用者の都合により退会する場合に払戻しが認められるかどうかについても、個別の判断となります。

いずれの場合であっても、払戻しに応じる場合を利用規約に限定的に列挙しておき、「常に払戻しが可能である」と誤解されるような表示・説明を避けることが重要です。

◆ポイントは自由に換金できる

ポイントについては、前払式支払手段のような規制がないので、現金との交換(換金)をすることが可能です。

もっとも、実際に換金を認めるかどうかは事業者ごとの判断になります。

例えば、2016年2月8日現在、Tポイントは換金が認められていますが、楽天スーパーポイントは(公式には)換金が認められていません。

◆まとめ

このように、前払式支払手段とポイントは、発行にあたっての「対価」性の有無利用にあたっての換金の可否という違いがあります。

事業者において、前払式支払手段・ポイントサービスのいずれを導入するにせよ、それぞれに関する規制を踏まえ、顧客にとって利便性の高いサービスを提供していただきたいと思います。

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