前払式通信販売の通知が行われていない実態

標準

通販業者は、代金の全部または一部を前払いとしている場合があります。

このような「前払式通信販売」については、特定商取引法で特別なルールが定められています。

とあるネット通販業者においてこのルールが徹底されていないケースがあったので、注意喚起のため、解説しておきたいと思います。

◆「前払式通信販売」とは何か

商品の引渡し、権利の移転や役務の提供を受ける前に、顧客から代金の全部または一部の支払いを受ける通信販売は、「前払式通信販売」と呼ばれます。

事業者にとっては、代金を確実に回収できるというメリットがありますが、反面、消費者にとっては、通販業者の債務が履行されるまで不安定な立場に置かれることとなります。

そこで、特定商取引法は、事業者と消費者との関係を速やかに確定させるため、承諾等の通知義務を定めています(特定商取引法13条)。

◆どのような場合に通知義務を負うのか

通販業者が承諾等の通知義務を負うのは、次の2つの要件いずれも満たす場合です。

⑴ 取引方法として前払式通信販売が予定されていること

例えば、たまたま顧客が代金を先に支払ったにすぎない場合は、この要件を満たさないため、通販業者は承諾等の通知義務を負いません。

⑵ 申込みを受け、かつ代金を受領すること

これに関して注意したいのは、決済方法としてクレジットカードが利用される場合です。

クレジットカードが利用される場合には、クレジット会社が顧客の銀行口座から代金額を引き落としたとき=代金の受領ということになります。

◆何をどのように通知すればよいのか

承諾等の通知義務は、単に申込み完了メールや承諾メールを送るだけでは足りません

通知の内容や方法は、細かく法定されているため、注意が必要です。

⑴ 通知の内容

通販業者は、次の事項を通知しなければなりません(特定商取引法13条1項、同施行規則12条)。

  • 申込みを承諾する旨または承諾しない旨
  • 代金等の受領前に申込みを承諾する旨または承諾しない旨を通知してある場合には、すでに通知してある旨
  • 事業者の氏名・名称、住所、電話番号
  • 受領した金銭の額、それ以前に受領した金額があるときはその合計額
  • 金銭を受領した年月日
  • 申込みを受けた商品名、その数量、権利・役務の種類
  • 申込みを承諾するときは、商品の引渡時期・権利の移転時期・役務の提供時期

⑵ 通知の方法

通知の方法としては、原則として「書面」の送付による通知が必要です(特定商取引法13条1項)。

一定の要件を充たせばウェブサイト上の表示やメールによる通知も認められますが(特定商取引法13条2項)、この要件もまた政令で細かく定められています(特定商取引法施行令4条1項)。

⑶ 通知の時期

通知をすべき期間も、「遅滞なく」行われることが求められています。

書面の場合は3、4日程度、ウェブサイト上の表示やメールによる通知の場合は1、2日程度といったところでしょう。

◆通知を怠るとどうなるのか

通知を怠った場合、業務改善の指示(特定商取引法14条)や業務停止命令(同法15条)の対象となるほか、100万円以下の罰金に処せられます(同法72条4号)。

また、消費者との関係では、契約の成否にも影響が出てしまいます。

◆まとめ

このように、前払式通信販売は、事業者にとって代金を確実に回収できるメリットがありますが、消費者保護の観点から相応の手続を踏むことが求められます。

前払式通信販売に限ったことではありませんが、BtoCの取引は、多数の消費者を相手にするため、1つのミスが広範囲に影響を及ぼす可能性があります

事業者の皆様は、くれぐれもご注意ください。

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