通販業者が知っておくべき特定商取引法のルール

標準

事業者が通信販売を行う場合には、特定商取引法に従う必要があります。

しかし、特定商取引法は複雑でわかりにくいせいか、しばしば同法に違反している事業者に出くわします(本人には違反の自覚がなく、「うっかり」というケースがほとんどです)。

そこで、通信販売に関する基本的なルールについてまとめました。

◆「通信販売」とは

「通信販売」とは、消費者が郵便・電話・ファックス・インターネットなどの方法により商品の販売・役務の提供の申込みを行う取引方法(電話勧誘販売を除く)をいい、原則としてすべての商品・役務が対象となります(特定商取引法2条2項)。

「通信販売」という文言から、商品の販売だけを意味するものと誤解している事業者もいますが、役務の提供も含まれるので、注意しましょう。

◆通信販売に関する4つのルール

通信販売については、大別して4つのルールが設けられています。

⑴ 広告規制

通信販売の場合、消費者は、訪問販売などのように事業者から突然に勧誘を受けるわけではなく、契約を締結するべきか否かを慎重に検討することができます(これを「通信販売には不意打ち性がない」と表現することがあります)。

そのため、通信販売については、消費者に適正な情報が提供されている限り、原則として消費者の自己責任に委ねられます。

逆にいえば、消費者に適正な情報を提供することが重要ということになります。

そこで、特定商取引法では、広告や表示に関するルールに重点が置かれています。

① 広告の表示義務(特定商取引法11条、同施行規則8条)

事業者は、広告をするときには次の事項を表示しなければなりません。

  • 販売価格、役務の対価、送料の表示
  • 代金(対価)の支払時期および方法
  • 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
  • 商品(指定権利)の売買契約の申込みの撤回または解除に関する事項(返品の特約がある場合はその旨含む)
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  • 事業者が法人であって、ウェブサイトやメールなどを利用して広告をする場合は、その代表者または責任者の氏名
  • 申込みの有効期限があるときは、その期限
  • 販売価格、送料等以外に消費者が負担すべき金銭があるときは、その内容および額
  • 商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
  • ソフトウェアに関する取引である場合は、そのソフトウェアの動作環境
  • 商品の販売数量の制限などの特別な販売条件(役務提供条件)があるときは、その内容
  • 請求によりカタログなどを別途送付する場合、それが有料であるときは、その金額
  • メールによる広告を送る場合には、事業者のメールアドレス

② 誇大広告の禁止(特定商取引法12条)

事業者は、商品・サービスの性能・内容、売買契約の申込みの撤回または解除に関する事項について、著しく事実に相違する表示をしたり、実際のものよりも著しく優良・有利であると誤認させるような表示をしてはなりません。

③ 迷惑メールの禁止(特定商取引法13条)

事業者は、原則として、消費者の承諾を得ないでメール広告を送信してはなりません(オプトイン規制)。

④ 返品特約の表示義務(特定商取引法15条の2)

商品や指定権利の返品の可否や条件を定める場合には、消費者にわかりやすいように表示しなければなりません。

返品特約の表示義務は民事ルールであるため、この表示が欠けていたり、不十分であったりしても、行政処分や刑事罰の対象にはなりません

ただし、実務上わかりやすい表示かどうかをめぐってトラブルとなることがあるため、注意が必要です。

⑵ 前払式通信販売の承諾等の通知義務

商品の引渡し(権利の移転、役務の提供)の前に代金(対価)の全部または一部が支払われる「前払式通信販売」の場合、事業者は、消費者からの申込みを受けかつ代金(対価)の全部または一部を受領したときは、所定の事項を記載した通知をしなければなりません(特定商取引法13条)。

申込みに対して自動的に発せられる受付完了メールや承諾メールは必ずしもこの通知には該当せず、記載事項も法定されているので、注意が必要です。

⑶ 債務の履行拒否・遅延の禁止

通信販売による契約に基づく債務や、契約解除による原状回復義務(例:代金返還など)の履行を拒否したり、遅延したりすることは禁止されます(特定商取引法14条)。

⑷ 顧客の意に反して申込みをさせようとする行為の禁止

ボタンのクリックにより有料の申込みとなることを消費者にわかりやすいように表示していなかったり、消費者が申込内容の確認や訂正をできるための措置を施していなかったりすることを禁止し(特定商取引法14条)、行政処分の対象としています。

◆ルール違反には厳しい制裁

ルールに違反した事業者は、業務改善の指示(特定商取引法14条)や業務停止命令(同法15条)などの行政処分のほか、刑事罰(同法72条)の対象となることがあります。

◆まとめ

このように、通信販売については、広告規制(広告の表示義務、誇大広告の禁止、迷惑メールの禁止、返品特約の表示義務)、前払式通信販売の承諾等の通知義務債務の履行拒否・遅延の禁止顧客の意に反して申込みをさせようとする行為の禁止といったルールが設けられています。

知らず知らずのうちに違反している事業者も散見されますので、あらためて自社の運用をチェックしてみてはいかがでしょうか。

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