BtoCのサービスにおける利用規約(約款)は、原則として事業者が自由に定めることができます。
そのため、利用規約の内容は、いきおい事業者に有利なものとなりがちです。
しかし、消費者は多くの法令で保護されており、事業者はこれらの法令との関係を考慮しなければなりません。
このうち最も基本的なものとして、消費者契約法との関係で注意すべき点を解説します。
◆事業者の損害賠償責任を免除する条項
利用規約をみていると、「本サービスに関して利用者に生じた損害について、当社は一切責任を負いません」といった規定を見かけることがあります。
しかし、事業者の損害賠償責任を全部免除する条項は無効です(消費者契約法8条)。
また、一部免責であれば問題ないかというと、必ずしもそうではなく、事業者に故意・重大な過失がある場合には、事業者の損害賠償責任の一部を免除する条項も無効です(同条)。
裏を返せば、事業者に軽過失がある場合に一部免責とする条項を定めることは許されるということになります。
例えば、事業者としては、事業者に軽過失がある場合の賠償の範囲について、直接かつ現実に生じた通常の損害に限定し、特別な事情から生じた損害を除外しておくことが考えられます。
◆高額な損害賠償額の予定・違約金に関する条項
契約が解除された場合に消費者が支払うべき損害賠償額の予定・違約金に関する条項にも注意が必要です。
具体的には、「平均的な損害の額」を超える損害賠償額の予定・違約金や、年14.6%を超える遅延損害金に関する定めは、無効となります(消費者契約法9条)。
実務においては、「平均的な損害」であるかどうかをめぐって争われることが多々あるため、利用規約でキャンセル料を設定する場合などは注意が必要です。
◆消費者の利益を一方的に害する条項
これらのほかにも、消費者の利益を一方的に害する条項は無効とされます(消費者契約法10条)。
例えば、中途解約・キャンセルそのものを制限する条項、権利の行使期間を制限する条項などが考えられますが、これらに限られるものではありません。
消費者契約法10条との関係は、事業者と消費者の関係、商品・サービスの内容や裁判例などを踏まえ、特に慎重に検討すべきポイントです。
◆まとめ
このように、利用規約で事業者に有利すぎる条項を定めた場合、消費者契約法により無効となることがあります。
また、あまりに一方的な契約条件は、無効とならなくても、商品・サービスに対するレピュテーション(評判)を傷つける要因にもなりかねません。
利用規約を定める際には、消費者保護に関する法令や判例を踏まえた上で、慎重な検討を行うことが重要です。
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