ポイントサービスを導入する際の注意点②~資金決済法との関係~

標準

◆ポイントサービスと前払式支払手段との違い

ポイントサービスと類似するものとして、前払式支払手段(Suica、PASMO、Edyなど)があり、いずれも商品やサービスの代金の支払いの際に充当したり、商品やサービスの提供を求めたりすることができます。

しかし、前払式支払手段は、事業者が利用者からの対価と引換えに発行するものであるのに対し、ポイントは、事業者が販売促進費や広告宣伝費などを負担して発行するものであって、景品やおまけとして利用者に発行されるものであるという点で違いがあります。

したがって、ポイントの発行に当たって、事業者が利用者から「対価」(資金決済法3条1項)を得ている場合には、前払式支払手段として資金決済法により規制を受けることになります。

◆判断基準は「対価」の有無

さて、ポイントサービスと前払式支払手段とを区別する基準が「対価」の有無であるとすると、「対価」の意味が問題となります。

一般に、「対価」には、現金のほか、財産的価値があるものはすべて含まれるとされていますが、広範で曖昧なため、ポイントが「対価」と引換えに発行されているか否かは難しい問題です。

結局のところ、社会通念に照らして判断せざるを得ず、通常であれば、利用者が「対価」を支払ったと認識するかどうかが基準となります。

例えば、利用者から前払式支払手段と引換えにポイントを発行する場合、もともと現金等で購入された前払式支払手段には財産的価値があるといえるため、そのポイントは「対価」と引換えに発行されたものといえます。

これに対し、景品やおまけとして発行された他社ポイントと引換えに自社ポイントを発行する場合(ポイント交換の場合)、単なる景品やおまけとして発行されたものである以上、他社ポイントに財産的価値はないとする考え方もあれば、ポイント交換による取引の対象となるという点に着目して、一定の財産的価値があるとする考え方もあり、議論が錯綜しています。

◆ポイントサービスに資金決済法の規制は及ばない

いずれにせよ、このような「対価」と引換えに発行される前払式支払手段は、利用者が発行者である事業者に対して信用を与える(利用者が事業者に対してお金を前もって預けておく)ものであり、金融機能を持っていることになります。

そこで、利用者保護と支払手段としての信用維持の観点から、前払式支払手段については、資金決済法により様々な規制が設けられています。例えば、財務(支)局長に対する届出(法5条)や登録(法7条)、資産保全義務(法14条1項)、前払式支払手段の発行を廃止する場合の手続(法33条1項)等が定められています。

これに対して、単なる景品やおまけであるポイントサービスは、資金決済法による規制を受けません

したがって、ポイントサービスを導入するに当たって、財務(支)局長への届出や登録は不要であり、誰でも自由に発行することができます。事業者には資産保全義務もなく、ポイントサービスの利用条件の変更や廃止などは事業者が自由に行うことができます。

◆ポイントサービスにも利用者保護の視点を

もっとも、消費者の利益を一方的に害するような対応は、消費者とのトラブルを招くだけでなく、そもそもポイントサービスが主として集客のために導入されるものであることからすれば、事業者のブランドやレピュテーション(評判)を傷つけるだけであって、本末転倒といわざるを得ません。

したがって、ポイントサービスであっても、利用者保護の観点から、消費者契約法や景品表示法等による規制を踏まえた対応が必要不可欠です。

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