ノークレーム・ノーリターン特約

標準

◆ノークレーム・ノーリターン特約によるトラブル

ヤフオクなどのネットオークションで中古品を購入すると、商品にキズや汚れなどがあったり、買主(落札者)の予想していた状態と異なったりすることがあります。

他方で、ネットオークションでは、出品されている商品について、「ノークレーム・ノーリターンでお願いします」、「苦情・返品には応じられません」などと表示されていることがあります(ノークレーム・ノーリターン特約)。

このような場合、商品にキズなどがあることを理由として返品や返金を求める買主と、ノークレーム・ノーリターン特約があることを理由としてこれを拒絶する売主(出品者)との間でトラブルとなることがあります。

◆ノークレーム・ノーリターン特約の意味

本来であれば、購入した中古品に「瑕疵」(キズや汚れなど)があった場合、買主は、契約を解除して返品や返金を求めたり、損害賠償を請求したりすることができます。

このような買主からの請求に応じなければならない売主の責任を「瑕疵担保責任」といいます(民法570条・566条)。

ただし、中古品の売買の場合には、新品とは異なり、ある程度の品質の劣化などが存在することは契約に織込み済みであることも多々あります。

したがって、届いた物に品質の劣化などがあるからといって、常に「瑕疵」があることとなるわけではなく、品質の劣化などが契約に織り込んだ範囲を超えている場合に「瑕疵」があることとなり、売主の瑕疵担保責任が問題となるわけです。

いずれにせよ、ノークレーム・ノーリターン特約は、このような瑕疵担保責任を免除する趣旨であると考えられます(民法572条)。

◆ノークレーム・ノーリターン特約の有効性

売主が事業者で買主が消費者である場合には、消費者契約法が適用されるため、ノークレーム・ノーリターン特約は、消費者の利益(ここでは売主の瑕疵担保責任を追及できるという利益)を一方的に害するものとして無効となります(消費者契約法8条1項5号、同法10条)。

したがって、買主は、届いた物に「瑕疵」があれば、ノークレーム・ノーリターン特約の有無にかかわらず、売主に対して返品や返金を求めることができます。

これに対して、事業者ではない一般人が売主となる場合、消費者契約法は適用されず、ノークレーム・ノーリターン特約は有効となります。

ただし、この場合であっても、売主が商品に「瑕疵」があることを知っていたときは、ノークレーム・ノーリターン特約は無効となる点に注意が必要です(民法572条)。例えば、明らかに数量が不足していたり、明らかなキズや汚れがあったりするにもかかわらず、商品説明に記載がないような場合には、売主は商品に「瑕疵」があることを知っていたといえるでしょう。

◆商品の品質などに関するトラブルを防止するために

売主としては、品質の劣化などをあらかじめ契約に織り込むことで、瑕疵担保責任が問われる可能性のある「瑕疵」の範囲を狭めることができます。

具体的には、出品に際して、キズや汚れの場所や程度などを具体的に記載したり、画像を添付したりして、商品の状態を具体的かつ詳細に説明しておけば、それらの事情は契約に織り込まれることとなります。

他方、買主としては、不明な点などを売主に質問するといった対策が考えられますが、そもそも、中古品にはある程度の品質の劣化などが存在するのが通常であることや、粗悪品を出品する悪質な売主も存在するといったリスクを踏まえた上でネットオークションを利用すべきでしょう。

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