ポイントサービスを導入する際の注意点④~消費者保護との関係~

標準

◆消費者保護の必要性

ポイントサービスに対し、消費者保護の観点から資金決済法のような規制を設けることは、ポイントサービスの運営コストを高め、多様で革新的なポイントサービスの存続を阻害し、ひいてはポイント関連ビジネスの縮小や消費者の利便性の低下につながるおそれがあります。

しかし、他方では、発行する事業者と利用する消費者との間で、「せっかく貯めたポイントが突然のサイト閉鎖で消滅してしまった」、「登録した個人情報の取扱いに不安がある」などといった苦情やトラブルが生じています。

また、ポイントサービスが資金決済法の適用対象外とされた理由は、ポイントサービスが法規制になじまないという積極的な理由からではなく、立法過程において、規制肯定派と規制否定派が共通認識を得ることができず、将来の課題とすることが適当だと考えられたからに過ぎません。

したがって、事業者と消費者との間のトラブルの動向やこれに対する事業者の対応次第では、今後ポイントサービスが法規制されることは十分あり得ます

また、本来ポイントサービスが主として集客のために導入されるものであることからすれば、消費者の利益を一方的に害するような対応は、事業者のブランドやレピュテーション(評判)を傷つけるだけであって、本末転倒です。

したがって、事業者としては、消費者保護の観点から、消費者契約法や景品表示法等による規制を踏まえたポイントサービスを提供することが重要です。

◆消費者契約法

ポイントサービスの内容については、基本的には利用者と事業者との間の合意(利用規約)により定められるので、原則として、事業者が自由に設定できます

例えば、ポイントの有効期間については、有効期間を最終の利用日から起算するもの、最終の発行日から起算するものがあるほか、有効期間を無期限とするものもあり、各事業者によって様々です。

しかし、利用者がポイントを購入したものの、実質的にこれを利用できないような短期の有効期間を設定する場合など、消費者にとって極めて不合理な内容である場合には、その有効期間の定めが無効(消費者契約法10条)になる場合もあるとされています。

また、消費者契約法では、事業者が不当な勧誘行為を行ったことによって、消費者が契約内容などを誤認した場合、消費者はその契約を取り消し得ることとされています(消費者契約法4条)。

したがって、事業者としては、ポイントサービスを導入する場合、消費者の利益に配慮した利用規約を定めるとともに、消費者がポイントサービスの内容について誤認をしないように適切な説明を行う必要があります。

◆景品表示法の表示規制

景品表示法では、価格その他の取引条件について、実際のものや他の事業者のものよりも著しく有利であると消費者を誤認させるような表示等は、有利誤認表示として禁止されています(景品表示法4条1項2号)。

例えば、あたかも多くの商品について「20%」のポイント付与が適用されるかのように表示しているのに,実際には20パーセント分のポイント付与の対象となるのは一部の商品に限定されているときなどは、有利誤認表示となり得ます。

◆個人情報保護法

ポイントサービスの提供に当たっては、会員登録等により、事業者が消費者の個人情報を取得する場合があります。

個人情報の取扱いについては、個人情報保護法その他ガイドラインを踏まえ、これらの態勢の整備が必要となります。

◆ガイドライン

ポイントサービスを利用する消費者が「損害を被った」と認識するトラブルは、ポイントサービスに対する消費者の期待と事業者の認識のズレから生じます。

そのため、このようなトラブルを防止するためには、消費者がポイントサービスの内容を正しく理解できることが重要です。

このような観点から、「企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)」が策定されています。

このガイドラインでは、消費者契約法、景品表示法や個人情報保護法などを踏まえた上で、ポイントサービスを取り扱う事業者に対して、
①消費者がポイントサービスの内容を網羅的に確認できる仕組みの整備
②事業者から消費者に対する重要事項の積極的な情報提供
③トラブル等への適切な対応
を求めています。

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