◆景品表示法の景品規制
前回のコラムにおいて、ポイントは、景品やおまけとして利用者に発行されるものであると説明しました。
この景品やおまけとしてのポイントが景品表示法の規定する「景品類」(同法2条3項)に当たる場合、ポイントの最高額・総額、種類や提供の方法などが制限される可能性があります(同法3条)。
日常用語にいう「景品」のすべてが景品表示法にいう「景品類」に当たるわけではないので、注意してください。
◆ポイントは「景品類」に当たるか
景品表示法において、「景品類」は、「顧客を誘引するための手段として…事業者が自己の供給する商品又は役務の取引…に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であって、内閣総理大臣が指定するもの」と定義されています(景品表示法2条3項)。
ポイントサービスは、販売促進や顧客囲込み等のため(=「顧客を誘引するための手段として」)、利用者が企業から商品やサービスの提供を受ける際に(=「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引…に付随して」)、景品やおまけとしてのポイント(=「経済上の利益」)が発行されるサービスですから、まさに「景品類」に当たるようにも思えます。
しかし、「景品類」に当たるのは、そのうちの「内閣総理大臣が指定するもの」とされており、具体的には、「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年公取委告示第3号)(通称「定義告示」)において、ポイントサービスが「値引」といえる場合には、「景品類」には当たらないこととされています(定義告示1項ただし書き)。
そうすると、定義告示のいう「値引」の意味が問題となります。
これについては、「景品類等の指定の告示の運用基準について」(通称「定義告示運用基準」)というものがあり、「取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること」は、原則として、「値引」に当たるとされています(定義告示運用基準6⑶)。これは、今回売る商品やサービスについての減額であれ、次回売る商品やサービスについての減額であれ、結果として事業者自身の提供する商品やサービスの価格を下げるならば、それは原則として値引きと認められるという考え方によるものです。
したがって、ポイントを発行した事業者自身の商品やサービスについて減額をする場合(自社ポイントを発行する場合)には、「値引」といえるので、「景品類」には当たらないことになります。ただし、自社ポイントであっても、懸賞により発行する場合(くじ、抽選など)、使途を制限する場合、同一の企画において景品類の提供を併せて行う場合には、「値引」とはいえず、「景品類」に当たることに注意が必要です(定義告示運用基準6⑷)。
これに対して、他の事業者との取引に使用できるポイント(共通ポイント)は、ポイントを発行する事業者自身の提供する商品やサービスの価格を下げることにならないので、「値引」に該当せず、「景品類」に当たることになります。
◆すべての「景品類」に景品規制が及ぶわけではない
仮にポイントが「景品類」に当たるとしても、必ずしも景品規制(景品表示法3条)が及ぶわけではありません。
この景品規制については、官報告示によって行うこととされており(景品表示法5条2項)、一般的に問題となる告示は2つあります。
具体的には、「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年公取委告示第3号)(通称「懸賞制限告示」)と「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年公取委告示第5号)(通称「総付制限告示」)です。
懸賞制限告示は、懸賞により景品類を提供する場合の規制であり、総付制限告示は、懸賞以外の方法により景品類を提供する場合の規制となっています。
このうち懸賞制限告示に例外規定はないので、懸賞により景品類を提供する場合には、同告示による規制が及ぶこととなります。
これに対し、総付制限告示によれば、「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票」(総付制限告示2項3号)は、「景品類」に該当する場合であっても、総付景品規制が及ばないこととされています。
しかも、ここにいう「証票」には、「『一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準について」(通称「総付運用基準」)によって、「金額を示して取引の対価の支払いに充当される金額証(特定の商品又は役務と引き換えることにしか用いることのできないものを除く。)」と「自己の供給する商品又は役務の取引及び他の事業者の供給する商品又は役務の取引において共通して用いられるものであって、同額の割引を約する証票」が含まれることとされています(総付運用基準4⑵)。
◆自社ポイントに景品規制は及ぶか
先ほど述べたとおり、自社ポイントは、原則として「景品類」に当たりませんが、懸賞による場合、使途を制限する場合、同一の企画において景品類の提供を併せて行う場合には、「景品類」に当たるため、景品規制が及ぶかどうかを検討しなければなりません。
⑴ 懸賞により自社ポイントを発行する場合
懸賞制限告示に例外規定はないので、懸賞により自社ポイントを発行する場合には、同告示による規制が及びます。
⑵ 使途を制限する場合、同一の企画において景品類の提供を併せて行う場合
いずれの場合であっても、自社ポイントである以上は、「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票」(総付制限告示2項3号)に当たり、総付景品規制が及ばないようにも思えます。
しかし、使途を制限する場合には、「特定の商品又は役務と引き換えることにしか用いることのできないもの」として、「証票」から除外されると考えざるを得ないので(総付運用基準4⑵)、使途を制限する場合は、総付景品規制が及ぶこととなります。
他方、同一の企画において景品類の提供を併せて行う場合には、このような除外事由が定められていないので、総付制限告示2項3号により、総付景品規制が及ばないことになります(消費者庁ホームページの「景品に関するQ&A」のQ26を参照)。
◆共通ポイントに景品規制は及ぶか
共通ポイントは、すべて「景品類」に当たるため、景品規制が及ぶかどうかを検討することとなります。
⑴ 懸賞により共通ポイントを発行する場合
懸賞制限告示に例外規定はないので、懸賞により共通ポイントを発行する場合には、同告示による規制が及びます。
⑵ 懸賞以外の方法による場合
共通ポイントは、「自己の供給する商品又は役務の取引及び他の事業者の供給する商品又は役務の取引において共通して用いられるものであって、同額の割引を約する証票」(総付運用基準4⑵)であるため、「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票」(総付制限告示2項3号)に含まれます。
したがって、共通ポイントは、自社と他社で同額の割引をするものである限り、総付景品規制が及ばないこととなります。
◆最後に
結局、ポイントサービスは、懸賞によらない限り、景品表示法の景品規制が及ぶことは少ないといえますが、事業者がポイントサービスを導入する場合には、あらためて景品規制との関係を確認すべきです。
なお、その際には消費者庁ホームページの「景品類に関するQ&A」が参考になります。
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