3Dプリンタを活用することで、複雑なデザインを容易に造形することができるようになりました。
あっと驚くデザインを、あっと驚く素材(紙、樹脂や金属など)で造形することができる3Dプリンタは、商品デザインの現場においても活躍しています。
試行錯誤の結果、特殊な商品デザインが生まれた場合、これを権利として保護したいと思うこともあるでしょう。
そこで、商品デザインを保護するための法律を概観してみます。
◆商品デザインの保護に関する5つの法律
⑴ 意匠法
商品デザインを保護するための法律としては、まず何といっても意匠法です。
商品デザインが世に出回る前に意匠登録を行えば、意匠法による強い保護を受けることができます。
もっとも、意匠登録には厳しい要件(新規性、創作非容易性など)をクリアする必要があり、あらかじめすべての商品デザインを意匠登録することは難しいかもしれません。
⑵ 商標法
意匠登録を行うことができない場合であっても、商標登録を行うことにより商品デザインを保護することが考えられます。
本来、商標法は、ブランドを保護する法律であって、デザインを保護する法律ではありません。
しかし、特定のデザインが継続的に使用されることにより、そのデザインがブランドとしての機能を持つに至った場合には、商標法による保護を受ける余地があります。
もっとも、商品デザインを商標登録するにはやはり厳しい要件をクリアする必要があることに注意が必要です。
特に3Dプリンタによる商品デザインとの関係で問題となるのは立体商標ですが、立体商標の登録要件は、かなり厳格に考えられています。
⑶ 著作権法
また、意匠法や商標法のような登録手続を経ることなく保護を受けられるものとして、著作権法があります。
美術工芸品や、一定の要件を満たした応用美術にも著作権法による保護が及ぶとされているため、商品デザインの保護を考えるにあたっては、著作権法による保護も検討しなければなりません。
最近では、応用美術の著作物性を積極的に認めた知財高判平成27年4月14日判時2267号91頁の登場により、商品デザインの保護における著作権法の重要性は高まっています。
⑷ 不正競争防止法
さらに、著作権法と並んで検討すべき法律として、不正競争防止法があります。
商品デザインは、不正競争防止法上の「商品等表示」や「商品形態」にあたり得るため、他人が自社の商品デザインを模倣したり、使用したりする行為について、不正競争行為として、差止めや損害賠償を求めることが考えられます。
⑸ 民法
意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法のいずれの法律によっても商品デザインの保護を図ることができない場合には、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)を検討する余地があります。
実際に損害賠償請求が認められるケースは限定的かと思われますが、最後の手段として検討に値するでしょう。
◆まとめ
冒頭に述べたとおり、3Dプリンタによって複雑なデザインを容易に作ることができるようになったということは、その模倣や盗用も容易になったということです。
競合他社との差別化を図り、企業として生き残っていくために、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法、あるいは民法を踏まえた商品デザインの保護は、企業にとって極めて重要な課題です。
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