オークションサイトやクラウドソーシングのようなネット上での取引は、対面での取引とは異なり、「商品・サービスの提供や対価の支払いがきちんと行われないのでは?」という不安がつきまといます。
そこで、この不安を解消するため、買主が中立的な第三者(エスクローサービス提供会社)に代金を預けて、商品の引渡しを確認できた時点で、エスクローサービス提供会社が売主に代金を支払うこととする仕組みがあります。
これをエスクローサービスといいます。
◆資金決済法との関係が重要
エスクローサービスは、銀行しか行うことのできない「為替取引」や、免許を必要とする「信託業」に類似するため、かつては銀行法や信託業法との関係でグレーといわれていました。
しかし、2012年に資金決済法が施行されたことにより、資金移動業の登録を行えば、送金業務(取引の上限金額は100万円)を行うことができるようになりました。
もっとも、資金移動業に対しては、次のような規制があります。
① 資金移動業者としての登録
② 資産保全義務
③ 情報の安全管理のための措置等
④ 資金移動業者に対する監督
⑤ 本人確認義務等
このような資金移動業に対する規制は、事業者にとってかなりの負担となるため、資金移動業の登録を行わずにエスクローサービスの提供を行っている事業者も見受けられます。
◆資金移動業の登録を回避する手法
ここで注意したいのが、資金移動業の登録のないエスクローサービスのすべてが資金決済法に違反するわけではないということです。
実は、サービスの形式、内容や解釈を工夫することにより、資金移動業の登録をせずにエスクローサービスを提供することもできます。
その方法の1つとして、収納代行サービスとして行う方法があります。
収納代行サービスとは、商品・サービスの代金の支払いにあたって、売主から依頼を受けた事業者(収納代行サービス業者)に対して買主が支払いを行い、収納代行サービス業者が受け取った金銭を売主に渡すものをいいます。
資金移動業との違いは、収納代行サービス業者が単に資金移動の依頼を受けているわけではなく、売主から代金の受領権限が与えられているということです。
そのため、収納代行サービスでは、収納代行サービス業者が支払いを受けた時点で売主と買主の決済が完了することになります。
ただし、「収納代行サービス」と称していても、決済の背後にある原因取引(商品の売買など)の有無や、代金の受領権限の有無といった事情によっては、為替取引にあたる(=無登録のサービスは違法)と判断されることもあるので、注意が必要です。
◆まとめ
エスクローサービスを行うにあたっては、資金決済法との関係を検討することが必要不可欠です。
銀行法、信託業法や資金決済法に基づかずにエスクローサービスを提供しようとする場合には、利用規約などにおいて、エスクローサービス会社が代金を受領した時点で当事者間の決済が完了することなどを明確化しておくことが重要でしょう。
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