インターネット通販における解約・返品への対応

標準

◆3つの解約・返品リスク

事業者がネット通販を利用して商品やサービスを提供する場合、顧客や消費者から、様々な理由により、解約・返品の申入れがなされることがあります。

「商品に不具合があった」、「思っていたものと違う」といった理由による解約・返品の申入れについては、商品の品質管理の徹底、消費者目線の適切な情報の提供や広告の表現内容の見直し等を行うことにより対応することができます。

これに対し、事業者側の事情とは全く無関係に、顧客や消費者側の都合によって、解約・返品の申入れがなされることもあります。

具体的には、次の3つの場合があり、ネット通販を取り扱う事業者としては、これら3つの場合の対策を考えておく必要があります。

① 未成年者がネット通販を利用した場合
② 電子契約法の定める錯誤があった場合
③ 特定商取引法の定める法定返品権が行使された場合

◆未成年者がネット通販を利用した場合

未成年者が親権者の同意を得ずにネット通販を利用した場合、事業者は、原則として、解約・返品の申入れに応じなければなりません(民法5条)。

ネット通販では、対面取引とは異なり、申込者の外見などから年齢を推測することができないので、事業者にとって、このような解約・返品の申入れは予期しない事態です。

これに対しては、年齢確認が有効な対策となります。年齢確認に対し、未成年者が成年者であると偽って回答したような場合には、「詐術」(民法21条)となり、意思表示の取消しができなくなる(つまり解約・返品の申入れができなくなる)からです。

ただし、単に「20歳以上か」という質問に対して「はい」をクリックしたからといって、それだけで直ちに「詐術」となるわけではありません。

例えば、「未成年者の場合は親権者の同意が必要である」旨を申込み画面上で明確に表示・警告した上で、申込者に年齢や生年月日の入力を求めているにもかかわらず、未成年者が虚偽の年齢や生年月日を入力し、自分が成年であるように装ったような場合であれば、「詐術」となり得ます。

◆電子契約法の定める錯誤があった場合

ネット通販においては、事業者の用意したフォーマットに従って申込みや注文が行われることが多く、その過程でクリックミスや入力ミスなどの間違いをすることが多々あります。

そこで、電子契約法は、リンク先の情報を見るつもりで誤って注文ボタンをクリックしたり、次ページを表示させるつもりで誤って注文ボタンをクリックしたりしたような場合、商品の種類、数量、サイズや色などを間違えて注文ボタンをクリックしたような場合などに、契約が錯誤により無効となることを定めています(電子契約法3条本文)。

これに対して、事業者としては、顧客や消費者の真意を確認する画面を設定しておくことが有効な対策となります。このような画面を設定しておけば、電子契約法3条本文は適用されず(電子契約法3条ただし書)、多くの場合に錯誤無効の主張を封じることができるからです。

顧客や消費者の真意の確認は積極的に行われる必要があり、具体的には、①あるボタンをクリックすることで最終的な注文となることを明らかに確認することができる画面、②最終的な注文ボタンを押す前に申込みの内容をあらためて表示し、訂正の機会を与える画面を設定することなどが考えられます。

◆特定商取引法の定める法定返品権が行使された場合

ネット通販で商品や指定権利を購入した場合、商品の引渡し又は指定権利の移転の日から8日以内であれば、顧客や消費者には法定返品権が認められています(特定商取引法15条の2第1項本文)。

この場合、事業者は、解約・返品の申入れに応じなければなりません。

これに対しては、返品特約(解約・返品を認めない旨の特約など)を広告に表示し、かつ、最終申込み画面にも返品特約を表示しておけば、法定返品権は認められず(特定商取引法15条の2第1項ただし書)、事業者は、解約・返品の申入れを拒絶することができます。

返品特約は、顧客や消費者にとって見やすい箇所に明瞭に判読できるように表示しなければなりません(特定商取引法施行規則16条の2)。

返品特約の適切な表示方法については、経済産業省「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」が参考になります。

◆法律の規定とサービスは別もの

なお、以上のようなリスクと対策を踏まえつつ、事業者と顧客との信頼関係の程度によって、アフターサービスの一環として、あえて解約や返品に応じるということもあるようです。

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