インターネット通販における価格誤表記

標準

ネット通販では、事業者が価格の表記を誤った結果、注文者からのクレームが殺到して炎上したり、謝罪に追い込まれたり、最悪の場合にはサイトの閉鎖に追い込まれたりすることがあります。

有名な事例として、丸紅ダイレクト(2003年)、ベスト電器(2005年)、バリバリ家電(2010年)、土佐和牛芸術倶楽部(2013年)等があります。

事業者としては、あらかじめ対策を立てた上で、適切に対応することが必要不可欠です。

◆契約が成立しているかどうかがポイント

価格の誤表記が問題となった場合、すでに契約が成立しているのであれば、原則として誤った価格のままで売らなければならず、まだ契約が成立していないのであれば、価格を訂正する余地があります。

したがって、契約が成立しているかどうかが事業者の命運を分けるポイントとなります。

契約は申込みと承諾によって成立するので、ネット通販の場合には、売主からの承諾通知のメールが注文者に到達した時点、あるいは注文を承諾する内容のウェブ画面が注文者のモニター上に表示された時点で契約成立となります。

契約の成否に関して、ネット通販を取り扱う事業者が特に注意しなければならないのは、注文に対して自動的に行われる受注確認をもって承諾とみなされないようにすることです。

例えば,何らの留保もつけずに、「ご注文ありがとうございました」といった内容の受注確認メールを送信した場合、あるいはウェブ画面に同様の内容を表示した場合には,これらが承諾とみなされる可能性が高くなります。

そこで,事業者としては、次の①②のように、契約成立の時期を明確にしておくことで、価格誤表記の場合のリスクを軽減することができます。

①受注確認メールを「本メールは注文内容の確認メールであり、承諾の通知ではありません。当社において在庫を確認の上、受注が可能な場合には改めて正式な承諾通知をお送りします。」といった内容にする。

②利用規約に「当サイトから『ご注文の発送』メールがお客様に送信されたときにお客様の契約申し込みは承諾され、契約が成立します。」などと契約成立時期をあらかじめ明記し、注文の条件として利用規約への同意クリックを求める。

◆価格誤表記のまま契約が成立してしまった場合

仮に価格誤表記のまま契約が成立してしまった場合であっても、事業者は,錯誤を理由として契約の無効を主張する余地が残されています。

しかし、錯誤無効の主張は、事業者に重大な過失がある場合には認められません。事業者は,価格の入力を慎重に行いさえすれば誤表記を回避できる以上、重大な過失があると判断されるのが通常です。

もっとも、価格が誤表記であることを注文者が知っていた場合には、事業者はなお錯誤無効を主張できるとされています。

例えば,現行モデルのパソコンのように市場価格が安定している商品について、「激安」「限定」といったコピーが特にないにもかかわらず、極端に低い価格が表記されている場合には,価格が誤表記であることは誰の目にも明らかなので、注文者も価格の誤表記を知っていたといえます。

◆事業者が立てるべき対策

事業者としては、価格の誤表記をなくすことが何より重要です。

しかし、価格入力等は人間が行うものである以上,価格の誤表記を完全になくすことは不可能です。

したがって、前述のとおり、受注確認メールや利用規約において契約の成立時期を明らかにしておくことが現実的な対策といえます。

その上で,価格の誤表記があった場合の対処方法まであらかじめ利用規約に明記しておくことで、さらに炎上等のリスクを軽減することができます。

例えば、Amazon.co.jp 利用規約では、契約の成立時期とともに、価格の誤表記が合った場合の対処方法までフォローされており、参考になります。

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