◆特定商取引法と特定電子メール法
顧客や消費者に対するマーケティングの方法として、メール広告があります。
メール広告は、「特定商取引法」と「特定電子メール法」という2つの法律によって規制されています。
この2つの法律による規制は目的が異なっており、特定商取引法が「特定商取引における消費者保護」を目的としているのに対し、特定電子メール法は「通信インフラの適正利用の確保」を目的としています。
このように、特定商取引法と特定電子メール法は、規制目的が異なるため、規制対象者や規制対象メールなどにも違いがみられます。
もっとも、いずれの規制もスパム規制という点では共通しており、具体的な規制内容は、次の点においてかなり類似しています。
① オプトイン規制(除外事由に該当しない限りメール広告を送信してはならない)
② オプトアウト規制(メール広告の送信を拒絶した者に対してメール広告を送信してはならない)
③ オプトインの同意を得たことの記録の保存義務
④ 表示義務(氏名・名称、住所、オプトアウトの記載、拒絶の通知先など)
⑤ 違反の場合の指示、業務停止命令や罰則
◆広告効果を期待するなら顧客・消費者の許可(パーミッション)を
ところで、現在ではパーミッション・マーケティング(顧客や消費者の許可を得て行うマーケティング)が注目されているため、広告効果の最適化をめざす事業者は、顧客や消費者から許可(パーミッション)を得た上でメール広告を送信しています。
つまり、次のいずれかのオプトイン除外事由を満たした上で、メール広告を送信しているわけです。
① 顧客や消費者が送信に同意したメール広告であること(特定商取引法12の3第1項1号、特定電子メール法3条1項1号)
② 顧客や消費者の同意を得て送信されるメールマガジン等に付随した宣伝広告であること(特定商取引法12条の3第1項3号、省令11条の4第1号、特定電子メール法3条1項4号、省令6条3号)
これに対し、許可のないメール広告は、顧客や消費者にとってスパムと何ら変わりありません。
例えば、メールアドレスをインターネット上に公開している団体などに対して、メール広告(通信販売等のメール広告を除く。)を送信することは、オプトイン除外事由に該当するため、原則として適法です(特定電子メール法3条1項4号)。しかし、このようなメール広告は、頼みもしないのに見せられるという点でスパムと何ら変わりなく、受信者に無視又は拒絶される結果、広告効果を期待することはできません。
◆まとめ
結局、特定商取引法や特定電子メール法による規制を踏まえつつ、広告効果を期待できるメール広告は、
① 顧客から同意を得て送信するメール広告
② 顧客から同意を得て送信するメールマガジン等に付随した宣伝広告
に限られると思われます。
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