秘密保持契約(NDA)は無力か

標準

◆NDAを締結する意味

企業が共同開発、業務委託や業務提携などを行う場合、秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement: NDA)を締結することがあります。

NDAの目的は、秘密情報を受け取った当事者による漏えいや不正利用を防ぎ、秘密情報を開示した当事者の競争力や信用などを守ることです。

また、不正競争防止法の「営業秘密」として保護されるためには、秘密管理性・有用性・非公知性が要件とされています(不正競争防止法2条6項)。このうちの秘密管理性の要件を充たし、「営業秘密」としての保護を受けるためにも、NDAは重要な役割を果たします(営業秘密管理指針2⑷②)。

◆NDAの限界

NDAは秘密情報を守るために重要な役割を果たしますが、けっして万能ではありません。

「秘密情報を渡した事実やその範囲を立証することが難しい」
「実際に情報を取り扱う相手方の担当者を管理することが難しい」
「相手方による漏えいや不正利用の事実を立証することが難しい」
「漏えいや不正利用により生じた損害を立証することが難しい」

以上のような問題は、秘密情報を開示する場合に常について回る問題であり、弁護士としても対応に苦慮するところです。

◆秘密保持のためにできること

⑴ 適切な内容のNDAを締結する

NDAだけでは限界があるとはいえ、やはりNDAを締結するに越したことはありません。

そして、そのNDAの内容は、実際の案件に即したものである必要があります。

秘密情報の範囲は明確ですか?
秘密情報の開示や利用の目的は特定されていますか?
秘密情報の開示を受けることのできる者の範囲は限定されていますか?
秘密情報の取扱者や管理責任者は特定されていますか?
違反行為があった場合の違約金の額や算定方法は定められていますか?

あらかじめ用意してある雛形をそのまま流用するのではなく、適切な内容のNDAを締結しましょう。

⑵ NDAの運用を徹底する

どれだけ完璧なNDAを締結したとしても、その運用が徹底されていなければまったく意味がありません。むしろ、秘密保持のためには、この運用の徹底こそが肝となります。

①秘密情報を開示した事実やその範囲を記録しておく
②NDA上で特定された取扱者や管理責任者に対して管理の徹底を要求する
③開示された秘密情報をしっかり管理し(他の情報とは別に管理し)、漏えいや不正利用のルートを追跡できるようにしておく

以上のような対応が必要不可欠であり、さらに案件に応じた工夫することが重要です。

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