システム開発にあたって契約書を作成すべき3つの理由

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◆なぜ契約書が作成されないのか

システム開発は、開発対象となる目的物が無形のものである上に、複雑で個別性が高いため、契約書(基本契約書・個別契約書)の作成が重要となります。

ところが、システム開発をめぐる紛争では、正式な契約書が作成されていないケース(例えば、簡易な内容の注文書・受注書の授受だけで済ませているケース)に遭遇することが多々あります。

契約書が作成されなかった理由を、紛争の当事者に尋ねると、

「(知人に紹介された、あるいは名の知れた相手方であったため)信頼しており、トラブルなど想定していなかった」
「トラブルになった場合には協議でなんとかなると思っていた」
「単価の低い案件であったため、書類の作成を軽視していた」
「納期に間に合わせるため、正式な契約の締結を待つことができなかった」
など、回答は様々です。

しかし、システム開発にあたって契約書を作成しないことは、トラブルを招く原因となります。

経済産業省からの委託により、情報システム・ソフトウェア取引高度化コンソーシアムが作成・公表した『情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集』(2010年3月)でも、「正式契約書を締結していないのに作業を開始してしまう」ことがトラブル原因の1つとして指摘されています。

◆契約書を作成しないことによるリスク

システム開発にあたって正式な契約書を作成しない場合、3つのリスクを抱えることになります。

⑴ 契約の履行や損害賠償を請求できない

ベンダがユーザに対して報酬を請求し、ユーザがベンダに対してシステム開発(あるいは損害賠償)を求めるためには、業務委託契約が成立している必要があります。

しかし、裁判所は、署名(記名)・押印のある契約書がない場合には、契約の成立を認めることに消極的です。

仮に交渉過程で契約書案のやり取りなどがあっても、署名(記名)・押印がない場合には、やはり契約の成立を認めない傾向があります。

結局、正式な契約書がない場合、ベンダはユーザに対して報酬を請求することができず、ユーザはベンダに対してシステム開発(あるいは損害賠償)を請求することができないことになってしまいます。

⑵ 契約の履行や損害賠償を請求する場合に費用・時間・労力がかかる

仮に契約の履行や損害賠償を請求する場合、契約書がない以上、契約の内容を確定する作業から行わなければなりません。

仕事の目的物(開発対象であるシステム)、報酬の額や支払時期などについて、書面、メール、口頭でのやり取りなどの証拠から事実を1つ1つ拾い上げていく作業は、大変な費用・時間・労力がかかります。

法的な手続を取ったり、弁護士に委任したりした場合の費用も無視できません。

⑶ ただでさえ泥沼化しやすいシステム開発紛争がさらに泥沼化する

システム開発紛争では、一方が訴えを提起すると、相手方から反訴が提起されることが多くあります。例えば、ベンダがユーザに対して報酬を請求し、これに対して、ユーザが仕事の未完成や瑕疵担保責任を理由に契約を解除した上、ベンダに対して損害賠償請求をする場合などが典型です。

このように、システム開発紛争は徹底抗戦の様相を呈し、泥沼化する傾向があります。

正式な契約書が作成されていない場合、紛争解決の指針が存在しないことになるため、よりいっそう紛争が泥沼化するおそれがあります。

裏を返せば、これら3つのリスクを回避するためには、契約書の作成が必要ということです。

◆契約書の作成は必要不可欠

冒頭にも述べたとおり、システム開発は、開発対象となる目的物が無形のものである上に、複雑で個別性が高いため、契約の内容を契約書によって明らかにすることが重要です。

3つのリスクを回避し、また、仮に紛争が生じた場合における解決指針を示すため、システム開発にあたって契約書を作成することは必要不可欠です。

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