商品のデザインが盗用だといわれたら

標準

◆商品やデザインの盗用に関する関心が高まっている

東京五輪エンブレム問題をきっかけとして、多くの企業が商品やデザインの「パクリ」に敏感になったように思われます。

1つの例として、最近とある企業から受けたご相談を紹介いたします。

事案の概要は、A社が卸売業者からスマホケースを仕入れ、これにアクセサリを取り付けた上で自社の商品として販売していたところ、まったく同じスマホケースとアクセサリを組み合わせて先行販売していたB社から「模倣商品の販売をやめろ」といわれた、というものです。

◆商品形態を保護する法令は多数ある

商品形態を保護する法令には、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法や不正競争防止法などがあります。

しかし、実用新案法、意匠法や商標法による保護を受けるためには出願・登録が必要です。出願・登録をするためには、当然のことながら、それぞれの法令に定められた要件を満たすことが必要であり、仮にこれらの要件を満たす場合であっても、現状すべての商品について出願・登録がなされているわけではありません。

また、著作権法については、大量生産される商品の形態に著作物性が認められることは稀です(もっとも、最近では知財高判平成27年4月14日(平成26年(ネ)第10063号)がこれと異なる考え方を示し、物議を醸しています)。

結局、緻密な知財戦略を立てている企業や著名ブランドなどの事例を除けば、商品形態の模倣については、不正競争防止法の商品形態模倣行為(同法2条1項3号)への該当性を検討することが多いように思われます。

◆先行開発者の保護と自由な競争の確保との調和が必要となる

冒頭の事案においても、主に「他人の商品の形態…を模倣した」(不正競争防止法2条1項3号)といえるか否かを検討することになります。

ここで重要なのは、すべての模倣を野放しにすることは、先に商品を開発した者のインセンティブを妨げることになってしまい、他方、すべての模倣を禁止することは、自由な競争を妨げることになってしまうということです。

このような観点から、模倣行為から保護されるべき「他人」は、その商品を自ら資金や労力を投下して開発し、これを商品化して市場に置いた者に限られ、また、模倣行為から保護されるべき「形態」については、「当該商品の機能を確保するために不可欠な形態」が除かれることとされています。

冒頭の事例についてみると、B社は自らスマホケースやアクセサリを開発し、これを商品化したわけではないので(単に既成のスマホケース等を仕入れただけです)、模倣行為から保護されるべき「他人」とはいえないでしょう。

また、スマホケースは、その機能を発揮するためにどうしても取らざるを得ない形態があるため、「当該商品の機能を確保するために不可欠な形態」として、不正競争防止法による保護を受けられないことが多いものと思われます。かなり特殊な形態である場合は別ですが、少なくとも私が相談を受けた冒頭の事例においては、ごく一般的な形態のスマホケースであったため、「当該商品の機能を確保するために不可欠な形態」にあたることは明らかでした。

したがって、冒頭の事案においては、「A社はB社からの販売の差止めの求めに応じる必要はない」という回答になりました。

◆実際の紛争における対応

冒頭の事案は、常識に照らしても結論は明らかですが、実際の紛争においては、いかに論理的な主張反論を行うかが重要です。

また、「盗用」「模倣」といっても、検討すべき法令は上記のとおり多数あるため、当該事案における事実関係や各法令の要件効果を十分に把握・理解した上で主張反論を組み立てる必要があります。

これらの判断に迷った場合には、早い段階で弁護士に相談されることをお勧めします。

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