◆なぜ利用規約が重要なのか
渋谷近辺のベンチャー・スタートアップ企業からご相談などをいただくことが多々あります。
ベンチャー・スタートアップ企業の展開するサービスは実に多彩ですが、その中でもネット通販、オンラインゲーム、口コミサイトや情報仲介のようなサービスは、多数の顧客やユーザーとの取引を円滑迅速にこなすことが必要不可欠です。
そのため、契約条件や利用条件をその都度定めることをせず、あらかじめ利用規約(約款)を定めておくことになります。
利用規約は、顧客やユーザーとの間で発生したトラブルを解決するための基準となることはもちろん、トラブルが発生しないように適切に行動するための指針にもなるものです。
ところが、ベンチャー・スタートアップ企業の場合、利用規約のリーガルチェックまで手が回っていないことも多く、当然あるべき規定が設けられていなかったり、あいまいな規定文言であったり、規定相互間が矛盾していたりすることがままあります。
利用規約は原則としてすべての顧客やユーザーに適用され、また、企業を拘束するものでもあるため、不合理な利用規約を定めた場合には、事業規模の拡大や顧客・ユーザーの増加にともない、トラブルの火種や自社に不利な証拠を拡散させることになるという認識をもっていただきたいと思います。
◆利用規約を定めるときのポイント
利用規約の具体的内容はビジネスモデルやサービスにより様々ですが、利用規約を定める手順として、次のポイントを押さえましょう。
⑴ 他社の利用規約を参考にしつつ、自社のサービス内容を踏まえて修正する
いちから利用規約を作成しても構いませんが、類似サービスを提供する他社の利用規約を参考にするのが現実的です。
ただし、そのまま流用すると、自社のサービス内容からすれば当然あるべき規定が抜け落ちたり、自社のサービス内容と利用規約とが矛盾したりすることも生じかねませんので、自社のサービス内容を踏まえて修正していく必要があります。
また、法令に照らした検証も必要不可欠です。
例えば、ネット通販の場合、消費者契約法や特定商取引法の検討は必要不可欠です。また、同じネット通販であっても、食品の販売を行うのであれば、食品衛生法の検討が必要となりますし、薬の販売を行うのであれば、医薬品医療機器等法の検討が必要となります。
このリーガルチェックについては、法律の専門家である弁護士を関与させるべきでしょう。
⑵ 利用規約をあらかじめ明示し、顧客・ユーザーから同意を得る
いかに合理的な内容の利用規約を定めても、それが契約に組み入れられ、顧客やユーザーを拘束しなければ意味がありません。
利用規約が契約に組み入れられるための基準については、経済産業省の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」が参考になります。
同準則によれば、
①利用者が利用規約の内容をあらかじめ容易に確認できるように利用規約がウェブサイト上に開示されていること
②利用者が利用規約に従い契約を締結することに同意していると認定できること
が必要であるとされています。
①については「容易に」、②については「認定できること」とされているところがミソですね。わかりにくい場所に利用規約を設置したり、顧客やユーザーに形式的に「同意」ボタンをクリックさせたりするだけでは、基準を満たさないということです。
なお、同準則はあくまでもガイドラインにすぎませんが、民法改正案も、「定型約款」について同じような内容を定めていますので(同548条の2以下)、参考にしていただきたいと思います。
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