ネイティブ広告と景品表示法

標準

◆ネイティブ広告の意義

バナー広告のクリック率が低下する中、All About、Antenna、Gunosyなどの媒体において、いわゆるネイティブ広告が幅広く展開されています。

一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)の定義によれば、ネイティブ広告とは、「デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式や提供するサービスの機能と同様でそれらと一体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告」をいいます。

ネイティブ広告は、バナー広告と比べると格段の広告効果があるといわれていますが、他方で、編集コンテンツと広告との区別がつきにくく、消費者の誤解や不信感を招くという問題があり、特に広告であることを明示しないものは、いわゆるステルスマーケティングと同様の問題を孕むものといえます。

このような問題を踏まえ、JIAAは、「インターネット広告倫理綱領及び掲載基準ガイドライン」や「ネイティブ広告に関する推奨規定」により、ネイティブ広告における広告表記(例:[広告]、[広告企画]、[PR]、[AD]など)、広告主体の明示、広告審査を求めており、これに沿った対応が主流となりつつあるようです。

◆景品表示法の観点からの検討

さて本題ですが、ネイティブ広告を景品表示法により規制することはできないのでしょうか。

景品表示法により規制される不当表示には、優良誤認表示(景品表示法4条1項1号)と有利誤認表示(同2号)があります。

まず、優良誤認表示は、商品・サービスの品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示す表示をいいます。

例えば、「カシミヤ25%」と記載することにより、あたかも対象商品の原材料としてカシミヤが25パーセント用いられているかのような表示をしていたにもかかわらず、実際には対象商品の原材料にカシミヤが用いられていなかった場合がこれにあたります。

次に、有利誤認表示は、商品・サービスの価格その他の取引条件について、実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示をいいます。

例えば、「全店3割引」と記載することにより、あたかもすべての商品が3割引となるかのような表示をしていたにもかかわらず、実際には3割引の対象が一部の商品に限られていた場合がこれにあたります。

ところが、ネイティブ広告において問題とされているのは、対象商品・サービスの内容や取引条件について不当な表示がなされているからではなく(もちろんこのような表示がなされている場合には優良誤認表示や有利誤認表示として規制されることになりますが)、商品・サービスを紹介する広告について、あたかも広告でないものであると一般消費者に誤認させるからにほかなりません。

しかし、広告を広告でないものと誤認させる行為については、先に述べた優良誤認表示や有利誤認表示の定義にあてはまるとはいえません。

実は、2012年に食べログやペニーオークションにおけるステルスマーケティングが問題となった際にも、同じような議論がありました。

当時、消費者庁が発表した「インターネット消費者取引に係る問題点及び留意事項」では、「商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該『口コミ』情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる」と指摘されています。

つまり、景品表示法との関係では、ステルスマーケティングにおける表示主体のなりすましという点を直接に捉えた規制ではなく、あくまでも商品・サービスの内容や取引条件についての表示に着目した規制がなされるということです。

結局、ネイティブ広告についても同様に、広告を広告でないものと誤認させる点が景品表示法により規制されるのではなく、商品・サービスの内容や条件についての表示に着目した規制がなされるにとどまると考えられます。

◆ネイティブ広告の今後

ネイティブ広告のあり方、規制の是非やその内容については、まだ議論が錯綜しています。例えば、JIAAのガイドラインなどにおいて広告表記が推奨されていますが、これに対しては、一般消費者は見出ししか追わないことが多々あり、広告表記の存在を認識できないことにより、結局のところ消費者の誤認や不信感を招いてしまうといった指摘もあります。

自主規制によるにせよ、法規制によるにせよ、広告効果と消費者の利益の調和が適切に図られることが望まれます。

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