医療法人に対する理事の責任

標準

◆医療法人と理事の関係

医療法人と理事の法律関係は、委任関係(民法643条)にあります。

受任者である理事は、委任者である医療法人に対し、善管注意義務を負います(民法644条)。また、理事は、医療法人の請求により、法人事務の処理状況等を報告しなければならず(民法645条)、事務処理に当たって受け取った金銭その他のものをすべて法人に引き渡さなければなりません(民法646条)。

◆善管注意義務の内容

善管注意義務は、受任者の職業、地位や知識等に応じて一般的に要求される注意義務であり、その具体的内容は、個々の事案における諸事情を勘案した上で定められます。

理事が善管注意義務に違反したことにより医療法人に損害が生じた場合、理事は医療法人に対して損害賠償責任を負うことになります。

たとえば、代表理事が法令や寄付行為の定めを無視し、独断的な業務執行を行った場合、その代表理事は注意義務違反を問われることになります。また、この場合、その他の理事についても、代表理事の違法または不適切な業務執行を知りながら、あえてこれを放置したようなときは、同様に注意義務違反を問われる可能性があります。

◆実務上の問題

医療法人の理事は、病院の管理者が兼任することが多く(医療法47条1項参照)、病院の管理者の資格は、臨床研修等修了医師に限定されています(医療法10条)。

医師はただでさえ多忙な上に、必ずしも医療法人の経営、法令や会計等に精通しているわけではないため、実務上、理事としての注意義務を尽くすことはなかなか難しいものがあります。

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