著作権等の侵害への法的対応

標準

◆増加する著作権侵害

インターネットやデジタル技術の普及により、著作物の複製や改変がいともたやすく行われるようになり、著作権者の許諾を得ない著作物を利用・改変や、著作者の意に反する著作物の改変に対して、民事上・刑事上の法的手段がとられる事例が増えてきました。

◆民事的手段

民事的手段には、差止請求(著作権法112条)、損害賠償請求(民法709条)あるいは不当利得返還請求(民法703条)があります。

⑴ 差止請求

著作権等の侵害行為が継続している場合、一刻も早く侵害行為を止めさせて損害の拡大を防ぐ必要があります。

この場合、著作権者等は、侵害行為の停止又は予防を請求することができ(著作権法112条1項)、これに付随して、侵害行為によって作成された物の廃棄などを請求することもできます(同条2項)。

この差止請求をするに当たっては、仮処分手続を利用するのが効果的です。仮処分手続は、本訴と比べると簡易な手続であり、迅速に結論が出ます。もっとも、担保(保証金)を立てることが条件とされており、事案によってはその保証金が相当高額になることもあるため、手続選択には慎重な検討が必要です。

⑵ 損害賠償請求

故意又は過失により著作権等を侵害した者に対しては、侵害によって発生した損害の賠償を請求することができます。

損害賠償請求をする場合、侵害行為と損害との因果関係や損害額を立証することが困難であることが多いため、①譲渡数量による損害額の推定(著作権法114条1項)、②侵害者の受けた利益の額を損害額と推定(著作権法114条2項)、③利用料・ライセンス料相当額の請求(著作権法114条3項)などの特別な規定が設けられています。

また、著作権侵害による経済的な損害とは別に、著作者人格権の侵害に基づく慰謝料(精神的苦痛の代償)を請求することもあります。ただ、裁判実務上、高額の慰謝料が認められることはそう多くはありません。

⑶ 不当利得返還請求

著作権侵害によって発生した損害を回復するためには、不当利得返還請求(民法703条)を根拠とすることもできますが、実務上は、損害額の推定規定のある不法行為による損害賠償請求を根拠とするのが通常です。

ただ、不法行為による損害賠償請求権が消滅時効にかかってしまった場合(侵害行為を知った時から3年経過したとき)には、その代替措置として利用する余地があります。

◆刑事罰

著作権の侵害については、10年以下の懲役または1000万円以下(法人は3億円以下)の罰金、著作者人格権の侵害については、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられます(著作権法119条以下)。

著作権者等としては侵害者を告訴しその処罰を求めたいところですが、海賊版の制作・頒布のように侵害の態様が悪質な場合や規模が著しい場合を除き、刑事罰に問われることは少ないのが実情です。

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