◆内部告発により企業が受けるダメージ
組織の不祥事や事故の多くは、組織内部の人間が監督官庁やマスコミなどの外部に告発すること(内部告発)によって明らかになります。
不祥事や事故はどんな組織にもあり、これらを完全に防ぐことはできませんが、いったんこれらが明らかになると、消費者、監督官庁やマスコミなどへの対応に追われ、信用回復に向けて経済的な負担を余儀なくされ、積極的な事業展開を行うことができなくなるなど、組織の受けるダメージは深刻です。
◆内部通報制度を設ける必要性
内部告発は、組織に対する害意をもって行われることもありますが、多くの場合、その動機は社会的正義感といった善意によるものです。
また、終身雇用制の崩壊、雇用形態の多様化や労働市場の流動化によって、企業の情報が社外に流出する可能性が高まった上、ツイッター、掲示板や動画共有サイトの普及によって、個人が社会に向けて情報を発信することが容易になりました。
したがって、不正を明らかにしようとする者を排除したり押さえつけたりすることは意味がなく、また不可能です。
むしろ、企業としては、内部通報制度を設け、不正を明らかにしようとする者を自社のリスクマネジメントに取り込むことが重要です。社外への告発(内部告発)ではなく、社内への通報(内部通報)を促すわけです。
◆内部通報制度がもたらすメリット
内部通報制度を設けることには、より積極的な意味もあります。
近時、消費者は、商品やサービスの選択に際し、企業のブランド価値をも考慮するようになっており、ブランド戦略は企業にとってますます重要となっています。
そのブランド戦略の1つとして、消費者への安心の提供があります。
内部通報制度は、不祥事や事故などの発生頻度の抑制、早期発見のためのルールであって、これが消費者の安心へとつながります。
また、内部告発により不祥事が明らかになった場合には対応が後手に回りがちであり、企業が自浄能力を示す機会がなくなるのに対し、内部通報によって発覚した場合には、迅速な社内調査によって原因究明と関係者の処分を行うことができ、自浄能力を発揮することができます。
◆内部通報制度は法律上の要請である
内部通報制度はコンプライアンス体制の一部であり、この制度を設けることは、取締役の善管注意義務(民法644条)や忠実義務(会社法355条)の一環といえます。
また、公益通報者保護法は、不祥事が発生した場合における企業の自浄能力の発揮に期待し、内部告発による企業への深刻なダメージを避けるため、通報者に第一次的には内部通報を促す設計となっています。
このように、内部通報制度を設けることは法律上の要請でもあるわけです。
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