「完全合意条項」のリスク

標準

◆契約書に記載のない事項を認めない「完全合意条項」

国際取引や一部の国内取引の契約書には「完全合意条項」が設けられることがあります。

「本契約は、本契約締結時における当事者の完全かつ唯一の合意であり、本契約締結以前における当事者間の明示又は黙示の合意、協議等に優先する」といった条項です。

完全合意条項は、英米法上のParol Evidence Rule(口頭証拠排除原則)を明文化したものであり、契約当事者間で契約書が作成された場合には、契約書に記載のない事項は効力が認められないというものです。

日本法の下では、契約書が作成された場合であっても、契約書に記載のない約定を他の証拠(例えば、メールやメモ書き)により証明できれば、その約定は契約の一部として効力が認められますが、完全合意条項はこれを排除するものです。

◆「完全合意条項」を設ける場合は慎重に

完全合意条項が設けられた場合には、予想外の債務の発生がなくなるというメリットがあります。

また、契約書さえしっかり管理していれば、契約のすべてを把握することができ、契約書に記載のない合意や覚書などの存在を心配する必要はありません。そのため、企業や組織内部における引継ぎなども円滑に行うことができます。

他方で、完全合意条項が設けられた場合には、契約書に記載されたことがすべてとなります。

したがって、完全合意条項を設けるに当たっては、契約締結以前における合意、協議や当事者の意向が契約書に正確に反映されているかどうかを入念にチェックしなければなりません。

また、契約の趣旨・目的や具体的な事実関係などに照らして、特定の条項を契約書に設けることあるいは設けないことによるメリット・デメリットを、一般の契約の場合よりも厳密に検討しなければなりません。

完全合意条項を設ける場合には、十分に慎重になるべきです。

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