口コミを活用したマーケティングの留意点

標準

◆消費者行動の変化と口コミの重要性

最近では、消費者が自ら必要な情報を検索したり、商品やサービスの評価をソーシャルメディア(掲示板、ブログ、フェイスブックやツイッターなど)で発信したりすることがすっかり日常化しました。

また、商品やサービスに対する消費者の評価が、他の消費者の行動に影響を与える傾向も強まっています。

このような消費者行動の変化を受け、マーケティングの手法も、かつてのように広告出稿などに頼るのではなく、興味のある消費者が自ら検索をしたりソーシャルメディアで聞いたりして調べてくれるということを信じて、消費者自身に見つけてもらうことを目的としたマーケティング(インバウンドマーケティング)が着目されるようになりました。

事業者にとっては、口コミがマーケティングの重要な導線となったわけです。

他方で、口コミが消費者行動に与える影響を逆手に取り、ステルスマーケティング(消費者に宣伝と気付かせないような宣伝行為をすること)も横行しています。

ステルスマーケティング(ステマ)については、情報を受け取る消費者からはマーケティング主体の存在を把握することが難しく、消費者の「正しく情報を知る権利」を侵害する可能性が高いという問題点が指摘されています。

◆口コミを活用したマーケティングと景品表示法

口コミを活用するかどうかにかかわらず、マーケティングの手法については、まず景品表示法との関係を検討する必要があります。

この点については、消費者庁が「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(消費者庁ガイドライン)を発表しています。

同ガイドラインによれば、口コミ情報が消費者によって書き込まれている場合、その口コミ情報は、「事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件…について行う広告その他の表示」(景品表示法2条4項)に当たらないので、景品表示法上の問題が生じることはありません。

これに対し、事業者が口コミ情報を自ら発信したり、第三者に依頼して発信させたりした場合には、注意が必要です。

この場合に、その口コミ情報が、商品やサービスのブランド、原材料、効果や実績などについて、実際のものや他の事業者のものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものであるときは、景品表示法上の不当表示として問題となります。

◆WOMJガイドライン

口コミを活用したマーケティングについては、WOMマーケティング協会が「WOMJガイドライン」を発表しており、同ガイドラインでは、主に次の2点に留意することが求められています。

⑴ 消費者行動を偽装しないこと

フェイスブックの「いいね!」の数やユーチューブの再生回数などについて、情報発信者に対価を支払って水増しする行為が禁止されています。

⑵ マーケティング主体と情報発信者との関係性を明示すること

マーケティング主体から情報発信者に対し、口コミマーケティングを目的として、重要な金銭・物品・サービスなど提供がなされるなど、両者の間に関係性がある場合には、その関係性が明示されるべきであるとされています(関係性明示原則)。

◆口コミを活用したマーケティングのあり方

ステルスマーケティングが問題となった多くの事例が示すとおり、消費者行動の偽装や関係性を明示しない広告に対する消費者の批判は日々高まっており、また、事業者がレピュテーション(評判)の低下により受ける損害は無視できない規模となっています。

事業者は、口コミを活用したマーケティングの健全な発展のためにも、レピュテーション・マネジメントのためにも、消費者の「正しく情報を知る権利」に配慮したマーケティングに努めなければなりません。

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