ベンチャー・中小企業とお付き合いをしていると、ニッチで独創的な商品に触れ、ワクワクさせられることが多々あります。
このような商品を顧客に提供するためには、顧客に直接販売する方法のほか、他社と販売提携をし、その販売網や人材を活用する方法があります。
ベンチャー・中小企業にとって販売提携による販路拡大は魅力的なものですが、販売提携の形態もいろいろあるため、そのメリット・デメリットをしっかりと理解した上で取り組む必要があります。
そこで、販売提携の代表的なものとして、販売店契約と代理店契約について解説します。
◆販売店契約と代理店契約は別モノ
販売店契約は、販売店(ディストリビュータ)がメーカーから自己の名前と計算で商品を仕入れ、顧客にその商品を再販売する契約です。
販売店がメーカーからいったん商品を購入することが前提となるため、メーカーからみれば、在庫リスクや販売リスクなどを販売店に負わせることができる一方、販売価格などの条件をコントロールすることは困難になります。販売店の価格設定によっては、商品が値崩れを起こすことなどもしばしば。
代理店契約は、代理店(エージェント)がメーカーの代理人としてメーカーの商品を顧客に販売する契約です。
代理店はあくまでもメーカーの代理人として商品を販売するにすぎないため、代理店が在庫リスクを負うことはありません。メーカーからみれば、販売価格などの条件をコントロールすることができるというメリットがあります。
販売店契約と代理店契約は、メーカーと顧客との間に介在する者(販売店・代理店)がメーカーの作った商品を顧客に販売するという点では共通するため、両契約の契約書には共通する条項が多くみられます。
他方で、売買契約の効果が誰に帰属するのか、在庫リスクや販売リスクを誰が負担するのかといった点で異なるため、これらの点が契約条項の違いとなって現れてきます。
両契約の主な違いは次の表のとおりです。
ちなみに、「『販売店』という表現を使用していながら、契約条項を具体的にみてみると実は代理店契約だった」なんてこともありますので、ご注意くださいね。
重要なのは、契約書のタイトルではなく、その内容です。
◆まとめ
販売店契約と代理店契約は、「販売提携」として括られることが多いものの、多くの違いがある契約形態です。
販売提携に関する契約を締結する場合には、それぞれの契約の特徴を正しく理解した上で、どちらの契約が自身にとって望ましいのかを判断しましょう。
他社との販売提携交渉を進めていたクライアントが販売店契約と代理店契約の基本的な違いすら把握していなかったため、慌ててクライアントに両契約の違いや交渉を有利に進めるためのポイントを助言して、どうにかクライアントを相手方と同じ土俵に立たせることのできた経験を持つ筆者からは以上です。
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