bitcoinなどの仮想通貨とSuicaなどの電子マネー。
いずれも商品やサービスの代金の支払いにあたって使用されます。
決済サービスを提供する事業者としては、自社の取り扱うものが仮想通貨、電子マネー、その他のいずれに該当するのかを正確に把握し、それぞれについて定められたルールを守らなければなりません。
そこで、資金決済法の改正案で示された「仮想通貨」の定義を踏まえつつ、仮想通貨と電子マネーとの違いについて解説します。
◆どちらも「決済手段」
仮想通貨と電子マネーはいずれも、商品やサービスの「対価の弁済のために」使用される決済手段です。
これは、同じように代金の支払いにあたって使用されるクレジットカードとは大きく異なる点です。
クレジットカードを店舗で使用した場合には、クレジット代金が預金口座から引き落とされるまでは決済が完了しませんが、仮想通貨と電子マネーの場合には、使用と同時に決済が完了することになります。
この点では、仮想通貨と電子マネーは、現金と同様の機能を持っていることになります。
◆「誰に対しても」「どのような物にでも」使えるか
仮想通貨と電子マネーとの差異が生じるのは、一般的受容性と汎用性でしょう。
一般的受容性とは、誰に対しても使える性質のこと。汎用性とは、どのような物とも交換できる性質のことです。
bitcoinのような仮想通貨は、普通の通貨(貨幣や紙幣)と同様、一般的受容性と汎用性を備え得るものとして設計されています。
改正法も、「不特定の者に対して使用することができ」ることを仮想通貨の要件として掲げています。
電子マネーの場合はどうでしょうか。
電子マネーも、加盟店の増加等により使用範囲が拡大すれば、一般的受容性・汎用性も高まります。
しかし、運営コストの問題が障害となります。
発行者(SuicaであればJR東日本など)からみれば、電子マネーのシステム開発や加盟店開拓などの費用に見合う収益を得るのは大変なことです。
加盟店(コンビニや飲食店など)としては、発行者に支払う手数料がバカにならないため、電子マネーの導入は負担となります。
結局、電子マネーを導入できる事業者は限られるため、今後、電子マネーの一般的受容性・汎用性が飛躍的に高まることはないのではないでしょうか。
もっとも、仮想通貨についても、現実に一般的受容性・汎用性を備えたものはまだ存在しておらず、現時点ではあくまでもその可能性を秘めているというレベルにとどまるという点は注意が必要です。
◆仮想通貨は転々流通する
一般的受容性・汎用性とは別に、仮想通貨と電子マネーとで大きく異なってくるのは、転々流通性です。
転々流通性とは、不特定の者への譲渡が繰り返される性質のことです。
多くの電子マネーは1回限りの使用しかできず、第三者に譲渡することはできません。つまり、転々流通性がありません。二重使用などの不正をチェックするため、使用の度に発行者に戻す必要があるからです。
転々流通する電子マネーも実現可能ですが、かなりのコストがかかってしまいます。
これに対し、仮想通貨は、不正を低コストでチェックするための独自の技術(ブロックチェーン技術)により、転々流通するものとして設計されています。
改正法が仮想通貨の要件として「不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる」ことを掲げているのは、こういった性質を反映したものといえます。
◆まとめ
このように、仮想通貨と電子マネーは、一般的受容性・汎用性の観点からの違いもありますが、転々流通性が大きな違いとなります。
仮想通貨はまだ発展途上の状態にありますが、これを支えるブロックチェーン技術とともに様々な可能性を秘めているため、今後も目が離せません。
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