◆請負・準委任・労働者派遣の違い
システム開発契約は、実務上、請負契約・準委任契約・労働者派遣契約のいずれかで処理されるといわれています。
ユーザが業務を効率化するためにベンダに特定のシステム開発を依頼するという典型的な場合には「請負」、契約締結段階では開発対象が明らかではなく、事務の処理を行うことを目的とする場合には「準委任」、ベンダの技術者がユーザの事業所に常駐し、ユーザの監督の下に業務に従事する場合には「労働者派遣」となります。
請負・準委任・労働者派遣の概要をまとめると、次の表のとおりとなります。
◆請負はユーザにとって有利
請負の場合、ベンダは仕事の完成義務や瑕疵担保責任などの重い責任を負うことが特徴的です。
これに対し、準委任の場合、ベンダは善管注意義務(システム開発のプロフェッショナルとして一般的に期待されるレベルの注意義務)を負うものの、仕事の完成義務や瑕疵担保責任を負いません。この場合、ベンダは、善管注意義務さえ尽くしていれば、ユーザに報酬を請求できることになります。
これらのことから、ユーザにとっては、準委任よりも請負のほうが有利であるといわれています。
実際、システム開発委託契約を締結する場合、ベンダはできる限り請負を回避しようとし、ユーザはできる限り請負を望む傾向があります。
◆労働者派遣は偽装請負・二重派遣に注意
労働者派遣に関しては、ユーザ・ベンダのどちらにとって有利かといった問題よりも、偽装請負や二重派遣といった違法行為に注意したいところです。
最近ではこういった違法行為を意図的に行うケースは減ってきたようですが、ユーザ・ベンダが無意識のうちに偽装請負や二重派遣を犯しているケースはまだあります。
ユーザとしては、請負契約を締結したベンダの技術者に指揮命令しないこと(偽装請負の防止)、常駐している技術者の所属企業や部署などを確認すること(二重派遣の防止)などを徹底すべきでしょう。
◆実態に合った契約をすることが重要
実際のシステム開発委託契約は、必ずしもいずれかの契約類型にあてはまるわけではありませんし、無理にあてはめる必要もありません。
契約書の表現に加え、ユーザ・ベンダの認識、委託業務の内容、実際の運用などをみると、いずれとも割り切ることのできない複合的な性質を兼ね備えているケースもあります。
請負・準委任などの契約類型の基本的な特徴を踏まえつつも、実態に合った契約を締結することが重要であり、ユーザ・ベンダそれぞれの具体的な権利義務を契約書で明らかにすることが重要です。
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